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2026.02.06

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精密プレス金型で「この加工は成立する?」の判断基準

― 試作・量産を見据えた設計視点 ―

製品開発部門の方から、
「板厚はt0.1mm、プレス加工成立しますか?」
「量産まで見たときに、この条件で進めて問題ないかだけ確認したい」
といった相談を受けることがよくあります。

実務経験上、プレス加工は設計段階でどこまで条件を整理できているかによって量産時の安定性と手戻りの有無が大きく変わります。

この記事は、プレス金型製作の現場で数多くの成立判断・試作・トライに携わってきた立場から材料・板厚・形状という前提条件に対して
「そのプレス加工が成立するか」をどう判断するかを整理したものです。

監修:昭和精工株式会社

目次


  1. 精密プレス金型における「成立判断」とは
  2. 精密プレス金型の設計で最初に確認する3つの判断要素
    2-1. 材料特性から見る成立判断
    2-2. 板厚とクリアランスから見る成立判断
    2-3. 形状と工程分割から見る成立判断
  3. なぜ図面だけでは成立判断ができないのか
  4. 精密プレス金型における成立判断の結論パターン3つ
  5. このような場合は、設計段階で金型屋に相談してほしい
  6. 相談前に整理しておくと成立判断が早くなる情報
  7. 精密プレス金型は「加工可否」ではなく「成立条件」を設計で決める

1.精密プレス金型における「成立判断」とは


一般に「精密プレス金型」という言葉は、
高精度な打ち抜きや曲げ加工を指して使われることが多くあります。

しかし、金型設計の立場から見ると
精密プレス金型とは金型の名称ではなく、その条件でプレス加工を成立させるために必要な技術です。

実際には、
・材料は何か
・板厚は何mmか
・どのような形状か
・工程能力(Cpk)と量産時のばらつき
・製品許容公差(バリ高さ、ダレ量、せん断面率)
・どの工程構成を想定しているか

これらの条件が噛み合わなければ、
いくら高精度な設備や加工技術があっても、安定したプレス加工は成立しません。

金型屋の役割は
「加工を請けること」ではなく
その条件でプレス加工が成立するかどうかを、設計の段階で判断することにあります。

2.精密プレス金型の設計で最初に確認する3つの判断要素


精密プレス金型として成立するかどうかを判断する際設計段階でまず確認するのは次の3点です。
これらは別々に考えられるものではなく、どれか一つでも読み間違えると、他の条件が整っていてもプレス成形は成立しません。

2-1 材料特性から見る成立判断


材料の硬さ、靭性、加工硬化性などは打ち抜きや曲げの成形性に直結します。
同じ板厚でも、材料が変われば
・破断面の状態
・バリの出方
・金型寿命
は大きく変わります。

過去にトラブル事例がある材料かどうか、
どの条件で問題が出やすいかを把握しているかは設計判断での判断精度を大きく左右します。

例えば、板厚t0.1mmでも材料が変わるとプレス加工条件は大きく変わります。
同じ形状でも、アルミ材では問題なく成形できても、ステンレス材では刃先側に負担が集中し、バリや欠けが発生することがあります。
金型設計では、材料ごとに「どこで破綻しやすいか」を先に想定し、刃先形状や逃げ条件を決めていきます。

2-2板厚とクリアランスから見る成立判断


板厚とクリアランスは数値で語られがちですが、実際には単純な計算だけでは判断できません。

一般的にクリアランス設定値は板厚の5~10%と言われていますが、狙う製品精度、せん断面の要求、量産寿命を踏まえた上で、どこを優先し、どこを割り切るかを設計段階で決める必要があります。

例えば、板厚t0.1mmのステンレス材でクリアランスを片側0.005mmまで詰めると初期のせん断面はきれいに出ます。
しかし、この条件では金型寿命やせん断面のばらつきが問題になるケースも少なくありません。
設計段階で「見た目の品質」と「量産時の安定性」のどちらを優先するかを決めておかないと、量産ラインで成立しなくなる事があります。

2-3形状と工程分割から見る成立判断


工程を分けるか、一工程で成立させる前提で設計するのか。
この判断を誤ると
試作はできても量産ラインで安定しない、という事態につながります。

例えば、試作段階では成形工程と打ち抜き工程を分けて成形していた形状でも
量産ラインでは生産性を考慮し、一工程へ集約できないかを検討するケースがあります。
ただし工程を集約すると成形負荷が集中し、条件次第では量産時にバラつきや品質の不安定を招くこともあります。
そのため、どの条件であれば工程を集約しても成立するのかを、試作結果や量産立ち上げ経験、成形挙動を踏まえて見極めることが重要になります。

3.なぜ図面だけでは成立判断ができないのか


図面はあくまで理想条件を示したものです。

実際のプレス加工では 
・材料ロットによるばらつき
・材料押さえ条件
・プレス機や金型の剛性
・工具の表面処理
・加工油
といった要素が複雑に影響します。

そのため、設計段階で判断できる範囲と、
実際に試作・トライで確認すべき範囲を切り分けることが重要になります。

試作は「不確定要素」ではなく
判断を確定させるための工程として位置づけるべきものです。

4.精密プレス金型における成立判断の結論パターン3つ


精密プレス金型における成立判断の結論は、実務上次の3つに整理できます。
1、成立する
 → 現行条件で量産まで見込める

2、成立するが条件付き
 → 工程分割、形状変更、条件調整が必要

3、現状条件では非推奨
 → 仕様・前提条件の見直しが必要

重要なのは
「必ず成立させる」ことではなく、どの判断に該当するかを早く明確にすることです。

5.このような場合は、設計段階で金型屋に相談してほしい


以下のような条件に当てはまる場合は
加工を前提に話を進める前に、設計段階での相談をおすすめします。

・新材料や実績の少ない材料を使用する場合
・板厚が薄く、ばらつきの影響を受けやすい場合
・過去にバリ、割れ、寿命トラブルを経験している形状
・加工業者から「やってみないと分からない」と言われた場合

これらはすべて
設計の段階で整理できる要素が残っているサインです。

6.相談前に整理しておくと成立判断が早くなる情報


初回の相談時に、以下の情報が揃っていると成立判断の精度とスピードが上がります。

・材料名
・板厚
・製品図(R・公差を含む)
・要求品質(バリ、せん断面、寿命など)
・想定工程(単発型/順送型、量産数など)
・プレス仕様書

すべて完璧に揃っていなくても構いません。
現時点で決まっている範囲が分かれば判断は可能です。

7.精密プレス金型は「加工可否」ではなく「成立条件」を設計で決める


精密プレス金型で本当に重要なのは
「この形状が加工できるかどうか」ではなく
量産まで見据えて、どの条件なら安定して成立するかを設計で判断することです。

条件によっては
試作・検討の結果、量産では成立しないと判断し
仕様の見直しを提案することもあります。

それも含めて
製品設計の段階でプレス加工の成立性を整理しておくことが、
加工依頼や見積もり前の手戻りを最小限にする、最も確実な進め方になります。

製品設計の段階で
この条件でプレス加工が成立するのかを一度整理しておきたい場合は
設計判断の確認としてご活用ください。

※ 図面や仕様が完全に固まっていなくても確認可能です◎

設計段階で成立性を整理しておくことで、
後工程での手戻りや判断の迷いを減らすことができます。

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